神様の願いごと

朝から探し続けて、もうすでに数時間は経っている。

時計を見ればおやつ時。ちょうど3時になったところだ。


わたしは人のいない小さな公園で、ひとりブランコに座っていた。

土曜日なのに妙に静かだ。本当に、ひとっ子ひとりいやしない。

キイ……キイ……とわたしが漕ぐブランコの音と、ぐうぅと鳴るお腹の音が、寂しく且つ小気味悪く響くだけ。


「……空、青いなあ……」


心も体も限界だった。服は泥だらけで、足は痛くて、腹の虫も鳴きやまない。

もう、動ける気がしなかった。体力的に疲れているのももちろんだけど、何よりガラスのハートがこれ以上は耐えられそうにない。

あてどもなくさまようだけの捜索。一向に見つからない捜し物。そして潰れる時間。無い利益。


「……空、青い、なあ……」


目の前を、クロじゃない黒猫が横切っていく。一瞬こっちを見たけれど、興味なさそうにシーソーの奥の植木の向こうに消えていった。


「…………」


ああ、本当わたし、何してんだろ。

花の女子高生だよ。土曜日だよ。遊びたい盛りだよ。みんな青春してるよ。

なんでわたしは知らない猫を必死で探して、最終的にこんなところでブランコ乗ってるわけ。

つーか見つかるわけないでしょ。そんなの最初からわかりきってたことでしょ。

あの女の子だって神頼みに来てたわけで、こんななんの取り柄もない小娘に頼ろうなんてカケラも思っちゃいないんだよ。


人の願いを、叶えるとか。初めから無理に決まってるのに。

なんで、わたしが、こんなこと。


「職務放棄か、怠け者め」

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