華ヒメゴト
スイセンの章

1.

彼から電話がこなくなって始めての春が来た。春なのにまだ肌寒い。

コーヒーメーカーのスイッチを押し、そのままケータイをつつく。

【着信0件】

その表示を見る度に冷たいため息が未だにでてしまう。まだ、心の隅で期待してる自分がいる。

「私って馬鹿な女…」

年下の男に本気になるなんて…私は30歳で普通のOL。彼は22歳で大学4年生。本気で愛するなんて、出会った頃は想像もしなかった。

愛する人をやっと見つけた。とか、なんとか言って出て行ったのが最後二ヶ月も音沙汰がない。

もともと、不定期な人で夜に家来てはする事だけして帰っていく。それだけだった。
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