王子様の危険な恋愛領域

何事かと驚いて教室の入り口に視線を向ければ、そこには光琉が立っていた。


「紗姫、こっち来い。」


私を呼ぶ声に、女の子たちからまたしても歓声が沸き起こる。


一気に騒がしくなった教室。


女の子たちが、うっとりとした視線を光琉に注ぐ中、当人は鬱陶しそうに眉をしかめている。


今にも怒りそうな雰囲気だ。


「紗姫、早くしろ。」


低い声で促された私は、お弁当箱を持って、慌てて光琉のもとに駆け寄った。


「そ、そんなに急かさないでよ…。」


チクリと不満を零したけれど、光琉は取り合うことなく、私の手を握る。


「…行くぞ。」


そして、頬を赤らめている周りの女の子たちには目もくれずに、スタスタと歩き始めた。



< 72 / 295 >

この作品をシェア

pagetop