本当の俺を愛してくれないか?
「それは本当に咲花に感謝しています」


呑んだ日の夜は全然記憶がないんだよね。気付いたら朝で、自分の部屋で。
短大時代にも私専属の送り係りの友達がいたけど、社会人になった今はその係りがすっかりと咲花になっちゃったんだよね。


「謝るならお酒辞めて欲しいわね。...まっ!とにかく本当にいい加減最上部長のことは、諦めた方がいいと思うよ。...お先に」


そう言うと咲花はさっさと立ち上がり、行ってしまった。


「...相変わらずだなぁ、咲花は」


いつも言うんだよね、咲花。最上部長なんて無理なんだから、諦めなって。
そんなの、咲花より私の方が分かっている。分かっているけど、仕方ないじゃない好きなんだから。

...この歳になって一目惚れしたのなんて、初めてなんだから。

最上部長があんなにかっこよくて、仕事が出来て優しくて。素敵すぎるのがいけないのよ。


ーーーーーーー

ーーー


「うー...。頭痛い」


土曜日。
目が覚めると自分のベッドの中で。
重い頭をどうにか起こして起き上がると、目に入ったのは机の上に置かれたメモ紙。
それは咲花からで、文句の山と鍵の置場所が書かれていた。


「あーあ。また昨日もやっちゃったんだ」


昨日は咲花がセッティングした合コンで。咲花に言われた手前、お酒は控えようと思っていたのについ勧められて我慢出来なくなっちゃったのよね。


「あとで咲花に電話しないと」


とにかくシャワーを浴びてすっきりして。カーテンを開けるときれいな青空が広がっていた。


「いいお天気」


時間を見るとまだお昼前。

せっかくだし、買い物にでも出掛けようかな。

そう決めたら善は急げ。すぐに着替えてお化粧して。街へと出掛けた。


「うわぁー、相変わらず可愛い!」


近くの駅ビルの中に入っているキッチン用品の専門店。
可愛くて、デザインも素敵で。
お金があればキッチン用品全部をここで揃えたいくらい。


「あっ、このティーポット可愛い」


これでハーブティーとか飲んだら最高だろうな。

そんなことを考えながらも隣のマグカップが気になり、手を伸ばしたその時


「あっ...!すみません」


「いや、こちらこそ」


気付かず触れてしまった手。

...ん?この声って...。


顔をあげると


「もっ、最上部長!?」


「えっ...小林さん!?」


やっぱり最上部長だった!

えっ!?なんで最上部長がここに!?
っていうか私服の最上部長、素敵すぎる!!格好いい人が着ると、なんでも似合ってしまうのね。

....って。ちょっと落ち着け自分!


「びっくりしました。まさか最上部長と、こんなところで会うなんて夢にも思いませんでした」


「あっ、あぁ...」


ん?なんか最上部長、いつもと様子が違うって思うのは私の気のせい?
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