本当の俺を愛してくれないか?
そのまま階段をあがると


「咲花...?」


私の部屋の前にいたのは咲花だった。


「ちょっ...!やだ!昨日の服のままじゃない!まさか宏美、うまくいっちゃったの!?」


興奮気味に私に駆け寄り、意味の分からないことを言う咲花。


「ちょっと待って。なんのこと?」


「なんのことって。惚けないでよ、もう!」


いまだ興奮が収まらない様子で、私の背中を思いっきり叩く咲花。
そんな咲花とは違い、私はますます意味が分からなくて。


「本当になんなのよ。それにどうしたの?こんな朝早くに来るなんて。...って言うか、なんで昨日に限ってちゃんと私のことを家まで送り届けてくれなかったのよ!」


そうだよ。咲花がいつものようにちゃんと私を送ってくれていれば、あんなことにはならずに済んだのに。


「まーまー。落ち着いて。だからこんな朝早くからちゃんと鍵を届けにきたわけじゃない」


そう言って私の前に差し出されたのは、鞄に入っているはずの家の鍵。


「えっ!ちょっと、なんで咲花が鍵を持っているのよ!」


咄嗟に鞄の中を見てみると、やっぱり鞄の中には鍵は入っていなかった。


「もう!私のおかげで部長と素敵な一夜を過ごせたんじゃないの?」


「素敵な一夜って...」


まさか!!


「で?どうだった?うまくいったの?」


大きな溜め息が漏れてしまった。


「うまくいくどころか、最悪よ」


「えっ?」


そっか。咲花の仕組んだことだったのね。
咲花は私のためを思ってしてくれたことなのかもしれないけど。
さっきのことを思い出すと溜め息も出てしまう。


「とりあえず上がっていって」


休日の早朝。このまま咲花と外で話しているわけにはいかない。
そう思った私は咲花から鍵を受け取り、咲花を家に招き入れた。


ーーーーーーー

ーーー


「...えっと。それは本当にごめんなさい」


あれから咲花にさっきまでのことを全て話した。


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