本当の俺を愛してくれないか?
「怖い」


「仕方ないでしょ?自分がしたことなんだから。大丈夫よ!何があっても私だけは絶対宏美の味方だから」


「咲花...」


あぁ。やっぱり私には友情よね。


「行くわよ」


「うっ、うん」


緊張しながらも咲花の後に続いて自分のデスクがある奥へと進んでいく。


すれ違う仲間に『おはようございます』って声をかけていくと、みんなもいつものように挨拶を返してくれる。


今のところは変化、なし?

無事に自分の席に辿り着き、辺りを見回すが小森さんの姿は見えず。
このまま就業が始まればプライベートな会話は出来ないし、なんとか午前中は乗り切れるだろう。

そう思い、ほっと胸を撫で下ろしたその時、急に叩かれた右肩。


「...!!」


あまりに驚いて言葉が出ない代わりに漫画のようなオーバーなリアクションをしてしまった。

すぐに振り返ると、私のオーバーなリアクションに驚いていてそして、左頬をほんのり赤く腫らした小森さんがいた。


「...ごめん、驚かせて」


「いっ、いいえ!」


いきなり正面から正々堂々と攻めてくるなんて思いもしなかったから、激しく動揺する私。

なに言われる!?

身構えている私。

だけどなぜか小森さんからは敵対視オーラは全く感じられなくて。


「あのさ、今日昼飯一緒にどう?」


「...は?」


予想だにしなかったまさかのランチのお誘い。

なっ、なに?小森さんってばなに企んでいるの?

さっき公衆の面前で殴って恥をかかせられた女をランチに誘うなんて。
ここは会社で問題を起こして自分のキャリアや出世街道に傷をつけたくないから?
だから人のいない外でなにかされる?

でもこの先も小森さんとはしばらくは同じ部署で先輩で。
嫌いだけど変な噂流されたり、仕事が出来なくなるのは嫌。
なら早めに謝っておいた方がいいのかもしれない。


「...小林さん?」


「あっ、すみません。えっと...。はい、行きます。ランチ」


「じゃあまたお昼に」


そう言いながら笑顔で立ち去る小森さんに謎が深まるばかり。
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