本当の俺を愛してくれないか?
そう言って俺にビールを差し出す桜子。


「久し振りに会ったけど相変わらずで良かったよ」


ビールを受け取り、乾杯をする。


「おう!おかげさまでお変わりなく元気でやってるよ」


「そっか...」


「家事だって自分なりにちゃんとやってるぜ?まぁ、殆んど手抜きの毎日だけどな!」


そう言って豪快に笑う桜子。


「バカ!ここ壁でしきられてないんだから、声押さえろ!」


通された席は座敷で背丈より低い木彫りの置物でしきられているものの、前後の人には声が丸聞こえ状態。
しかも木彫りの置物は固定されておらず。
なのに桜子はそれに寄り掛かり、完全に後ろの席の人のスペースを狭くしているに違いない。



「桜子、ちゃんと座れ。後ろの人に迷惑だろ?」


「だーいじょうぶだよ!後ろの席の人ならさっき帰ったみたいだし。つーかさ、話変わるけど翔太も年末年始は実家に帰るだろ?」


実家...。


「...いや、まだ悩んでる」


「は?なんでだよ。去年は帰ったじゃん。年末年始くらい親に顔出してやれよな」


「いや、まぁそれは分かっているんだけど仕事が終わるか分からなくて...」


違う。ただの言い訳。確かに仕事は今忙しいけど、年末年始までもつれ込むほどではない。

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