本当の俺を愛してくれないか?
「バカね。そんなの、誰から言われたって嬉しいに決まってるじゃない。現に見てみなさいよ」


そう言いながら咲花が指差した方向は最上部長で。

お昼休みに入っていると言うのに、ずっとパソコンと向き合ったまま。


「昨日もだったわよ。お昼食べる時間もないくらい忙しいんじゃない?
普通さ、そんな時に優しい言葉を貰えたら誰だって嬉しいに決まってるわよ」


本当、最上部長大丈夫かな?
あまりに働きすぎて体調崩したりしていないのかな?

クリスマスの日だって遅くまで会議で、疲れているのにケーキを作ってくれて話に付き合ってくれて。

次の日から忙しそうだったし。


「メール...してみようかな」


さり気なく、大丈夫ですか?って。


「そうだよ。今送ってみたら?」


「えぇっ!今!?」


「そうよ。善は急げって言うじゃない」


「うーん...」


でも、確かに今ならいいのかもしれない。だって明らかに最上部長大変そうだし。


引き出しからスマホを取り出す。


「きゃー、なんて送るのよ!」


興味津々のようで椅子ごと私に近づきメール画面を覗いてくる咲花。


「ちょっと咲花ってば近いから」


「いいじゃない。気になるんだから」


もう。仕方ないなぁ。

咲花が見ている前で文字を入力しようとした時、


「俺、最上部長の秘密を知っちゃったんですよね」


和やかなオフィス内に突然響く声。


声がした方を見ると、そこには座っている最上部長を上から見下すように見る小森さんの姿があった。


「えっ...。ちょっと、何?」


みんなも急に起きた不穏な空気に二人の法を見つめてしまっている。


勿論私も。


だって今、小森さん最上部長の秘密を知っちゃったとか言ってたよね?

それってまさか...。

いや、ううん。そんなわけないよ。だってバレるわけないよ。

会社での最上部長は完璧だもの。


「小森...。ここは会社だ。あまり大きな声を出すな」


「そりゃそうですよね!知られたくない秘密でしょうから」


そう言うと小森さんは私達に向かって話始めた。


「みんな最上部長に騙されているんだよ。...会社では完璧な人で男らしい人を演じているけど、そんなの嘘だったんだ」


小森さんの言葉に一気にどよめき出す。


「ねっ、ねぇ、宏美。ちょっとやばいんじゃない?」


「うっ、うん...」


「みんな知ってるか?最上部長の高校時代のあだ名!乙男だってよ。料理や菓子作りが趣味で手芸や裁縫も。それに可愛い物も好きだったらしいぜ」


「嘘...。最上部長が?」


「本当に?」



< 81 / 86 >

この作品をシェア

pagetop