徒花


行為が終わってもなお、肩で息をしながら、コウは私に何度もキスをする。

けれど、目が合ったら、急に気恥ずかしくなって、私たちは小さく笑った。



「痛くなかった?」

「うん」

「俺のこと好きになった?」

「うん」

「え?」


その、驚いた顔が面白くて、また笑う私。

コウは、何だかなぁ、と、困ったように肩をすくめ、



「んなこと言ってたら、第二ラウンドに突入するぞー」

「やだ! 無理!」

「おいおい、そこで今度は拒否んなよ」


そして触れるか触れないかのキスをまた。


背中に感じるフローリングの冷たさとは対照的に、熱を帯びた体。

じゃれるようにコウの鼻先が私の首元をくすぐる。



ひとしきり笑った後で、コウは疲れた体をフローリングに倒し、手探りで取り出した煙草を咥える。



「本気だから、俺」

「……え?」

「マジで。こいつしかいねぇ、って感じ。それだけは信じて」


体を起こした私を、コウは引き寄せる。


胸の上に載せられた私の頭。

コウの心臓はドキドキと鳴っていた。



「だから狼になっちゃったの?」

「それ言うなって」


甘い匂い。


私が笑ったら、コウも笑う。

笑い合いながら、私は小さな幸せを感じていた。

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