徒花
半分以上は嘘だけど、でもやっぱり私はおばあちゃんに余計なことでやきもきさせたくはないから。

笑う私を見たおばあちゃんは、それを信じてくれたらしく、大きく深くうなづいた。



「そうかい。それはよかった」

「うん」

「でも、何かあればすぐに言うんだよ? おばあちゃんは、マリアちゃんのためなら何だってしてあげるんだからね?」


おばあちゃんは名家の出身で、平たく言えばこのあたりの大地主だ。

駐車場にしている土地や、貸しビルも持っている。


そして、その孫である私は、おばあちゃんの寵愛を一身に受けて育ってきた。


だから私の口座には、毎月、勝手に、驚くような額のお金が自動的に振り込まれ続けている。

私が毎日のように、あんなに広い部屋に住み、遊びながら暮らしていけてるのは、すべてはおばあちゃんのおかげ。



「今で十分だよ。ありがとう」


私は、そこまでしてもらえるような人間じゃないのに。

それでも、おばあちゃんを悲しませたくはないから、だから私は、せめておばあちゃんの前では、“いい孫”でい続けたいのだ。



「私こそ、できることなら何でも言ってね。朝でも夜でも、おばあちゃんのためだったら、飛んでくるから」

「嬉しいねぇ。マリアちゃんは、おばあちゃんの自慢だよ」


言ってもらえると、テレ臭い反面、誇らしく思えてくる。

おばあちゃんが喜んでくれるなら、私はそれでいい。



「そうだ。じゃあ、おばあちゃん、ひとつ我が儘を言っていいかい?」

「何?」

「マリアちゃん、恋人ができたって今言ってただろう?」

「え? あ、うん」

「いつでもいいから、連れてきておくれよ。おばあちゃんも会いたいよ」


少し驚いた。


コウを?

と、思ったけれど、おばあちゃんから言われると、断りきれない。
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