ハッピー☆ウエディング


目眩を起こしそうな感覚になる。


目の前がクラクラして頭では何も考えられない。


慶介はそっとあたしから体を離した。
ウルウルした瞳で慶介を見上げる。



「…葵」


優しい声があたしを包み込む。


そして、同じ目線の慶介がキスをくれた。


この瞬間…



あたしは、慶介の婚約者なんだって実感する。


いつもは、まるで子供扱いなんだもん。



不意に慶介はキスをやめて立ち上がった。


「おいで」


そう言ってあたしの手をそっと引いた慶介は、優しく微笑んだ。
眼鏡の奥の瞳がキラキラ輝いて見える。



あたしは慶介に連れられて、寝室のベッドの上に座っている。


暗い部屋の中で慶介の輪郭がほんの少し確認できた。


ドキンドキン…



ああ…


お父さんお母さん、ごめんなさい。



あたし……



あたし、これから――



近いてくる慶介にあたしは自然と目を閉じた。


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