LOVERS♥HOLICK~年下ワンコと恋をして
柊SIDE


社屋から出たところで、

タクシーを止めて誰かが人待ちをしてるみたいだった。

後ろの座席の窓からこっちを窺っていた人が、

ドアを開けて降りてきた。

その足はずんずんと迷うことなく私の前にやってくる?


「だ、誰?」

言葉が出た瞬間に、

肩を抱かれて、


「高木柊さんでしょ?

 ちょっと来てもらえますか?」

耳元でぼそりと言われた。


「え?」

「俺、神宮碧(じんぐうあおい)
 彗の兄。」


お兄さん?


身長はバレーでもやってる人?

って思えるくらい高く2Mはありそう。

手足はすらりと長くて、

一重まぶたのすっきりした顔をしている。

でも、全体にきれいな顔は、

何処となく神宮零斗のイメージを受け継いでいる


そういえば輪郭は彗にも似てるような気がする。

私がぽかんとしていると、

彼は、いきなりグイっと手をひっぱったかと思うと

無理やりタクシーに押し込んだ。

私は、繋がれたままの手を振りはらうと、

くすくすと面白そうに笑う。

「ちょっと、お兄さんなんですかいきなり?」

「お兄さんねえ?

 ふうん悪くない響き。

 ああ、俺あんま説明とか苦手なんで着いてからいろいろ本人に聞いて?」


「着いてからってどこへ行くんですか?」


「イタリア」


「イタリアって??ここは日本ですよ?

 からかってます?」


「パスポートある?」

「持ち歩いてるわけないじゃないですか」

「そう、じゃあとってきてよ」

そう言って止まったところはアパートの前。

「どういうことなんですか?」

「だから、説明苦手、あとで聞いて。

 時間ないから急いで。

 彗に会えなくていいの?」

「彗?」

「そう。あいつが待ってるから。」

「本当に?」

「うん。だから早く」

初対面の人だけど、危険な感じはしないし、

このまま彗に会えなくなるのは嫌。

この人を信じよう。

タクシーを降りるとアパートの階段を駆け上がった。











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