ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。




やがて、信号待ちでバスが止まると……。



ランドセルを背負った集団が、列を作って…



横断歩道を渡っていた。





「お、大輔っ。あの大きい子、ウチの卒園生なんだよ。」



バスのおじさんが、ひらひらと手を振ると……



列の後ろの方を歩いていた少年は、こちらをチラチラと気にしながらも……



なにもリアクションなく、通り過ぎてしまった。






「あ~あ、1年生の頃にはよく手を振ってくれたんだけどなあ…。」




恥ずかしいのか、


それとも……



忘れてしまったのか…?








彼は、道路を歩いた先に待っている先生らしき女性へと頭を下げて……



そのまま、歩いて行った。








大好きだった幼稚園。

大好きだった先生。




だけど……、



その頃の記憶は、新しい環境に身を起き、新しい人と出会うことで……


次第に薄れていく。





幼かったからか……?




きっと、それも……、あるだろう。





私が覚えている当時の記憶と言えば……


発表会で、狐役のしっぽが重たくて気になったこと。


プールにあった3つの滑り台。


バス酔いして吐いてしまったこと。




お店やさんごっこでアクセサリーを作ったこと。



友達が描いた絵の上に落書きして、男の子が叱られていたこと。




………と、



このくらい。





漠然としている記憶の中で、



『楽しかった』。



そういう印象が…残っている。




年長組の時の担任の先生の顔……?





………覚えていない。








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