ナンパ男との恋
▼鼓動
小腹を満たしてから
駅のベンチに戻る途中で
美香が 難しい表情のまま
私の顔を見る。

「どうしたの?」

「あ、のさ。春菜
すっごく言いづらいんだけど
あれって 輝樹くんに見えない?」

美香の指差す方向を見ると
車から降りている数人の男女が
暗闇の中 うっすら見える。

「んー・・・私
視力 そんな良くないから
人影しか見えない・・・」

「駅に行くには
あそこ通らないといけないけど
春菜、平気・・?」

「平気も何も・・・
輝樹の姿が見えないし・・・
バレずに確かめれそう?」

「通りたくなければ
裏道の方向から行けるはずだけど・・・・
輝樹くんか 確かめたいんだよね?」

「・・・できれば、
輝樹か確かめたい・・」

「じゃあ・・・探偵ごっこでもしよっか?」

・・・探偵ごっこ!?

美香に手を引っ張られながら
電柱の影に隠れ、
建物の影に隠れ、
自動販売機の横に隠れ・・・

少しずつ 距離を縮めていく。

微かな外灯で 
目を凝らせば見えそうな距離にまできた。

建物の影から覗くように
目を凝らす・・・


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