【BL】初恋いただきます。
わがまま男子と初旅行

『第九章 わがまま男子と初旅行』


口にしたことは実行してしまうのが、要さんだ。


「ついに来たな、北海道。」
「うっ…うぅ……俺の単位が」
「涼、ここまで来たんだ。単位は諦めろ。」


“一週間休学しろ。”

その言葉通り俺は半ば無理矢理休学させられ、今、北の大地に足を踏み入れたわけである。

無視すればよかったんじゃないかって?
冗談じゃない。

“休まないなら学校中に俺達の関係を言いふらす。”
なんて言われたら、もう黙って言うことを聞くしかないじゃん……。


「卒業出来なかったら責任取ってもらうから。」
「かまわない。いくらでも背負ってやるさ。もう学校なんて辞めて俺に嫁げば良い。」


旅行に浮かれて変なこと口走ってる要さんは放っておこう。


「北海道と言えばグルメだろう。涼、何が食べたい?」


ウキウキと要さんはガイドブックを見ていらっしゃる。

子供みたい……。

ま、嬉しそうだからいいか。
この際だ、楽しまなきゃ損だしね。


「やっぱ海鮮じゃない?」
「ジンギスカンも捨てがたいな。」
「順番に食べれば良いんじゃない。時間はまだあるんだしさ、要さん。」
「それもそうだな。涼、」


名前を呼ばれ、手を差し出される。

これは多分手を繋ぐって合図だ。


「だ、だめだよ。こんなに人がいるんだから。」
「別に誰も見てない。」
「だーめ。絶対だーめ。」
「せっかくのデートなのに。仕方ないな、その分夜は覚悟しとけよ。」
「なっ………何言って!」
「やっぱりお前、可愛いよ。」


喉で笑った要さんは歩き出してしまって、俺は少し熱の持った顔のまま後を追った。



< 88 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop