君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
前に勤めていた時から、副社長のことは橘さんや色々な人から聞いていた。

穏やかな顔をしてても、頭ではなに考えているか分からない人だって。
一見なにも考えてなさそうで、上層部の度肝を抜くようなことを言い出して、やってのけたり。

副社長の秘書として働き始めて三ヶ月。今日みたいなことは日常茶飯事だった。私にわざと自分のスケジュールを伝えず翻弄させたり。そしてそんな私を見ていつも副社長は満足そうにしている。


「全く...!あれで仕事が出来なかったら、ただのガキな能無しよ」


「まっ!仕事が出来るなら、文句は言えねぇわな」


そう、なんだよねぇ。副社長の急な判断にいっつも私は翻弄されてはいるけど、だけどその副社長の判断はいつも正しくて。そして必ずプラスして結果として返ってくる。
だから私は、副社長に翻弄され続ける毎日を送りざるおえない。
こりゃ辞めたくもなる。


「きっと橘さんだからこそ続けられたんだろうなぁ」


いつも冷静に。そして私みたいに翻弄されることなく仕事をこなしていたんだろう。


「そんな毎回会うたびに愚痴るくらいなら、辞めちまえばいいじゃん!それに営業部に戻ることも出来るんだろ?」


「それはそうなんだけど...。圭吾さんにも頼まれちゃったし、さぁ」


そうなんだよね。
転職の話をもらって真っ先に圭吾さんに相談した時、凄く喜んでくれた。

以前よりも会いやすくなるし、何より
『菜々子なら、適任だな。俺の秘書が務まったんだから』って言われちゃったら、意地でも頑張らなくちゃじゃない?

...本当は藤原さんからもお呼びがかかったんだけど、ぐっとこらえ副社長秘書として頑張ってはいるものの...。


「それにさ、出戻りの私がいきなり副社長秘書なのよ?一度引き受けたのに、また辞めるってなったら、どうなるかくらい分かるでしょ?」


「...確かに」


以前と比べてちょっぴり居心地の悪い秘書課。私をよく思っていない人も沢山いるのは当たり前。
だからせめて、みんな辞めていく副社長の秘書は何がなんでも頑張りたいわけ。


「あーあ。私には副社長が理解不能」


何を基準にして判断して、指示しているのか分からない。
...それが分かれば少しは仕事が楽しいって思えるのかな?
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