こんな能力(ちから)なんていらなかった


 心の中で笑う。
 あの紫音は所詮夢で見た優羽の妄想でしかないのだ。

 あの笑顔も、あの腕も、温もりも、全て自分の妄想。
 都合の良い幻。


 それでも、よかった。


 紫音を見たかった。

 本物ではない。けど、紫音を感じたかった。


 死ぬ前に一度だけでも。


「…………会いたい」

「は?一体何を言うかと思えば……」



 指輪を握る手に力をこめる。



「紫音に会いたいよ……」



 そう呟いた瞬間。



「二度と口を開けないようにしてやるよ」



 目の前が真っ暗になった——



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