こんな能力(ちから)なんていらなかった




「さっき送ったばかりなのに……」


 マメだなぁと思いつつメールを開ける。
 そこには『了解』と『朝十時に学校最寄り駅』とだけ書いてあった。
 こちらも分かったと短い文で返す。

 一応妙齢の男女間なのに、なんだろう。
 この、業務連絡を彷彿とさせるやり取りは。

 もっと何かお互いに気遣うべきでは……?なんて思いはするものの、自分はめんどくさいことは嫌なので現状維持にすべきという結論に達する。

 まぁいっか、と呟いて優羽は携帯を鞄の上に放り投げた。

 今はメールの文面よりも学校だ。

 急いで制服に着替える。
 今日はネクタイの気分だったが、なにぶん時間がない。留めるだけですむリボンを選択する。適当にカーディガンを選びブレザーを羽織った状態で鞄を背負い廊下を走る。


「優羽、これ!」

「ありがと!」


 玄関前で待っていた奈々に千秋を渡され、それを肩にかけて、靴下が汚れることも構わず踏み石の上に足を下ろす。


「気をつけてな」

「うん!」


 キッチンから出てきた流に返事をし、行ってきますと笑顔で言った優羽はローファーをつっかけた状態で玄関から出ていった。


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