深海魚の夢~もし、君が生きていたなら~


「ハルさん、一口ください!俺もタラコスパ食いたい」

「ん?いいよ、ほら」


私の注文したパスタの皿をずらして彼の前に移動させると、大喜びでフォークに麺を巻きつけた。

ハルくんは大盛りのカツカレーと海老グラタン、特大サイズのパフェを食べ終えたばかり。

…食べ盛りで、本当に子犬みたいだ。尻尾が見える。

身長は既に178センチだと言っていたけれど、この分だとまだまだ伸びそうだ。

ジュリが、お前俺の奢りってわかって食ってんのか、とハルくんを小突く。

ユラさんとズッキーは静かに見守っていて、強烈な外見に似合わず微笑ましい光景。


(…平和だなー)


Re:tireのミーティング内容のメモを取りながら、四人を見渡す。

カナタとジュリとズッキーでベストメンバーだと思っていたけれど、この四人はバランスがいい、と思う。


(…私はまだ子供だから、結婚よりもこうやって騒いでるほうが合ってるよなぁ)


膝に乗せたノートにペン先でぐりぐりとハートやら星やら、意味のない模様を施していると、頭に軽い衝撃。

紙を丸めたジュリが落書きをしている私と、夢中でユラさんの分のガトーショコラを平らげているソラくんの頭を叩く。


「ったく、お前ら俺の話聞いてねーだろ!」

「「…ごめんなさい」」


口一杯にケーキを頬張ったハルくんと同時に声が被って、笑う。

なんだか、冴えなかった学生時代を取り戻したみたいな気分になる。


「今後は、ライブを挟みながらアルバムをリリースする為にスタジオに入って全員で猛練習して……」


Re:tireのリーダーであるズッキーが打ち合わせを進行していく。

打ち合わせで決まった事項をノートに書きながら、思わずにやけてしまう。

Re:tireの本格始動に胸を踊らせずにはいられない。



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