代償

………なぁ、文香。

5月半ば。

………半月以上、文香と会ってない。
「………上時総長」
「………上城、大丈夫か」
「上時総長、痩せたね」

マスターの喫茶店。
ソファーの上に寝る。

………もう、疲れた。
奴が家出してから。

また、ノルマアップさせられて。
25時間強制労働化。
………ブラック企業か、ホストは。
きつい辛い辞めたい。
そんな言葉しか、吐けない。

『上城、お前なら。簡単だろう?』
『出来ないと言うのか?店の顔にドロを塗る気か

………断れないようにして。
強制労働。
オーダーは、次々入る。
休む時間なんてない。
家にも帰れない。

どこぞのホテルと仕事場の往復。
淡々とした毎日。
酒飲んで。
飲んで飲んで飲んで飲んで飲んで飲んで飲んで………。
吐いて。

最悪な生活。
過酷過ぎる。


こうして。
マスターの店で時間を潰す。
どうせ。
すぐに。


ケータイが鳴る。
呼び出しだ、この着信音は。
………嫌だ。
行きたくない。

酒なんか、飲みたくない。
女なんか、抱きたくない。
店なんか、戻りたくない。

何もかも、したくない。


………ただ。
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