代償

天の邪鬼、反比例。

「何で、泣くんだ。バカじゃねぇのか」
「………っ」
ごめん………なさい。
戻りたいの。
出来るなら。
戻りたい。

「………天の邪鬼」
ポツッと上時が、低い声で言う。
分かってる。
分かってるんだ。
こんなに、分かりやすいのに。
気付かない人はいない。
………だよね。

上時は、どう思っている?
戻って欲しい、んだよね。
そう、暗示してた。
けど。

上時が戻って欲しいと思うほど。
私は戻りたくないって思う。
戻りたい。
本心とは、正反対。
私の中に流れる血は。

下時組の血だ。
前橋組の血じゃない。

悪の下時組。
善の前橋組。

………ははっ。
よく、あるよね。
どこぞの恋愛小説で。
叶わない恋をした恋人たち。
引き裂かれて。
傷付いて。
でも。
最後は叶う恋。
結局は叶う恋。
シアワセなの?
それで。
死後の世界で、結ばれようなんて。
あり得ない。

辛い恋なんて。
したくない。

「………大嫌い」
「上等」
大好きだよ。

あ。
結局、なっちゃった。


どんなに大嫌いでも。
結局。
好きになる。

人の心理は。
自分でも。
分からない。
< 138 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop