代償

電話越しの声。



時間って、残酷なものだよ。
あと、3日に迫ったその日。
どうすんのよ。

『文香は危ないから家にいろよ』
勇人さんはそう言って、出ていったきり。
私は家で膝を抱えている。
「………はぁ」
ため息しか出てこない。

上時、動いているかな。
ホストの仕事、しているのかな。
………こんなギリギリまで。
よくやるよ。

ホストって、お酒飲んで枕して。
あと、何やるんだろ。
お話とか?
………何話すの?
上時が生きていれば、聞けるかな。

………どうなるのかな。
前橋組。
薄い氷の上に成り立っている。
割れれば、終わりなのに。
気付いているの?
鈍感な上時でも、分かるよね?
いや、鋭感だよね?
前橋組のトップなら。
総長なら。
熱を加えるのは、この決闘だよ?
割れちゃうよ?
大丈夫?



お子ちゃまな私には、分からない。
まだ、気付かない。
刻一刻と迫りくることに。
よく考えれば分かるのに。
頭が麻痺した時、私はどちらの組にも、面倒な存在になったことを。
考えれなかった。


───許しては、いけなかった。
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