代償

乱闘。



───絶句した。

暴走族同士の、決闘。
目の前で、繰り広げられる。

『文香は、ここから動くなよ』
勇人さんが、そう言った。
私はここから動かない。
動けない。

前橋組の中に、上時の姿を見付ける。

「ぅわあ………」
綺麗。
前橋組の総長が代々受け継ぐ、着物。
長い振袖だ。
女物っぽいけど………?
似合ってる。
総長の、正装らしい。
………何で振袖?
留袖にしようよ。
邪魔じゃない?

よく。
動けるなぁ。
あんな、重そうな着物着て。
………何、感心してるのよ。

「………カッコいいよな」
「ああ。前橋の総長」
私を監視するために、近くにいる人が言う。
「てか、異常に着物、似合ってないか?」
「だよな。着物着るためにいるんじゃないか?」
「そうだなぁ。まず、顔がいいからなぁ」
………。
わーあ。


何故だろう?
ハラハラしない。
どっちが勝っても、負けても。

………どちらでも、



「───────!?」
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