代償

重さは、温もり。

朝。
上からの重みで起きる。
無論、起き上がることはできない。
………上時だ。
ソファーの上。
上時………。
寝てる。
綺麗な顔。
サラサラな髪。
シルバーのリングピアス。
上時を構成するパーツは全て整いすぎていて、怖い。
一定のリズムの呼吸。
何だろ。

………上時、私、何かね。
不思議なんだ。
何で憎くて仕方ないのに。
こんな、気になるの?
王道パターンの恋愛小説。
恋だと気付いて、相手に報告。
………こんな、ことで。

大人の男の人の重さ。
普通なら、潰れてるけど、ソファーだから沈むだけ。
重さは、温もり。
暖かくて、永遠にこのままなら。
どれだけ、嬉しいだろう。
上時に触れていられ………

………!?
な、わけない!!!
何で!?
おかしい!!
憎いのに、離れたくないなんて………!
一刻も早く離れてほしい。

離れないで。

相反する葛藤。
上時が起きるまで、続くのかな。
………そんなの、

「………ん」
すぐ、終わるんだよ。
「文香………」
肘を立てて、上から見下ろす。
離れた身体が温もりをなくす。
冷たくない空気が冷たく感じる。
………寒い。
思った。
人の温もりは、何よりも暖かい。
暖かくて、安心する。

………上時。
嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ………。

まだ、離れないで。
まだ、温もりを感じたい。

こんなにねだって………。

欲張りだ。
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