ゆず図書館。*短編集*
 

わなわなと震える手の中にあるチケットを見つめながら、私は声を震わせる。


「ほほほほんとに、いちれつめって書いてある……! 崎本の嘘じゃなかったんだ……!」

「何で嘘をつく必要があるんだよ」

「1年ぶりのcolorfulのライブが1列目で見れちゃうなんて、崎本、たまにはいい仕事するじゃん!」

「だろ? って、たまにはじゃなくて、いつもいい仕事してるだろ。誰のおかげでこの前のシークレットイベントにだって行けたと思ってんだよ」

「崎本さまさまのおかげなり~」

「わかってるならよろしい。くくっ」


にっと笑みを浮かべた崎本に、私の心臓がドキン!と跳ねる。

崎本は不意にこうやって私の心臓を跳ねさせるから、たちが悪い。

“colorful”のことは前と変わらず好きだけど、私はそれ以上に崎本のことを好きになってしまっていて。

テレビやDVDで“colorful”のことを観ている時でも、必ず崎本の笑顔が頭の中に浮かんでしまう。

“colorful”のライブにふたりで行くことだって、私にとっては好きな人との立派なデートだ。

それがたとえ片想いでも、一緒に笑い合えて、好きなことを共有できて、何よりもそばにいれるだけで幸せ。

 
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