君のためなら
 



 そこに突如黒塗りのいかにも高級そうな車が門をくぐり屋敷に入ってきた。


車は進めるところまでゆっくりと走行して停まると、ドアが開き、中から黒スーツの男たちが数人出てきた。



男たちは青年の前までやってきて、深々と頭を下げる。


『ユカリ様、総帥からの御伝言をお伝えに参りました』


男たちの中でリーダー格の者がカタコトのフランス語でそう言った。





「日本語で話しなよ。僕がフランス人にでも見えるかい?」

縁と呼ばれた青年は本から目を離すことなく言った。




『気分を害した』





男は瞬時にそれを理解するとまたさらに頭を下げた。





「…失礼しました。総帥からの御伝言です。『例の件、許可する』、と」




「ふーん」




「ただし―― ……」





























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