優しい君に恋をして【完】
●運命の人

大学生活






4月



優は大学生になり、



私は高校2年になった。






優は大学の講義では、FMマイクというのを先生につけてもらって、


FMの電波で直接優の耳の機械に先生の声が届く、



FM補聴システムというのを使っている。




そのせいで、雑音の中でも講義の内容がよく聞こえて、



友達とも雑音の多いところでは、iPadを使って会話したり、



ノートテイクという要約筆記のボランティアさんに、時々入ってもらったりと、



一般の大学に入ったけど、




優なりに、一生懸命頑張っているようだった。







私は駅から優の部屋の行き方を覚えて、


学校帰りに毎日寄っていた。








6月を過ぎると、


優の部屋に大学の友人たちがたまるようになり、



行くたびに、「こんにちはー」と、数人の友達に挨拶をされるようになった。




優が聞こえる友達の中に、普通に溶け込んでいることが、



なんだか嬉しくて、



本当に、よかったな.....と、友達とのやり取りを見て感じていた。




優の大学の友人たちは、私が来ると、

少しだけ話してすぐに帰っていく。




「ごめんね、優。せっかく友達が来てくれているのに、



私が来ると、遠慮させちゃうよね」






私は小さなキッチンでコップを洗いながら謝った。



優も隣にきて、冷蔵庫からペットボトルを出した。




「大丈夫だよ、みんな良い奴ばかりだから。




気にしなくていいよ。







それに......」








優は洗ったコップを二つ取り出して、




ペットボトルのお茶を注いで、私にひとつ差し出してきた。





「それに?」



そっと受け取ると、優は私の頭に大きな手のひらをのせた。






「俺は、二人になりたいし」



そう言って、私の前髪をくしゃくしゃっとした。















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