優しい君に恋をして【完】









えっ?ええっ???




くしゃくしゃになった前髪を、離された手で押さえると、


優がこっちを向いて、また可愛く笑った。





そして、優の指がゆっくりと私の顔に近づいてきたから、


押さえていた手を離すと、



優はすっと私の前髪に指を通した。





ドキッとした。



優が、真剣な眼差しだったから.....





ドキドキして、

胸がきゅーっとして......



前髪を直されながら、目をぎゅっと閉じた。





前髪から優の指先の感触が消えて、


そっと目を開けると、




優が見つめていて......




口だけ動かして何かを言った。




何?


ほんの一言だと思うんだけど、




こうして見ると、口を読むのってすごく難しい。



優はよくできるな.....と尊敬してしまった。




私はちゃんとその言葉を知りたかったから、


《もう一度言って》と手話でお願いした。





すると優は笑いながら首を振って、また、私の手を繋いできた。



口の動きを思い出して考えた。




……あわいい?



かわ……いい……




まさか、そんなこと……


あっているかもわからない、嬉しい言葉を、

ひとりで勝手に、言われたと思い込んで。



間違っていたら、めちゃくちゃ恥ずかしいし、

あっていても、めちゃくちゃ恥ずかしいし、


そんな事を頭の中で考えていたら、頬がどんどん熱くなってきて。

きっと真っ赤になっている顔を、見られないように、

下を向いた。



< 99 / 319 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop