今日も傷が増える
傷つきやすい売女
その娘の本性を知ったとき、僕はドキドキした。例えばそれは風紀委員長が売春行為をしているのとか、いつもは明るく優しいクラスメイトが動物虐待をしてるときとか、母親の不倫現場とかを目撃したようなときにくる、ドキドキに似ていた。いや、実際そういうのを目にしたことはないけど。

バスケ部部長、テストの点数取るのは赤点ばかり、クラスのムードメイカー、男子と女子の中立、いつもにこにこ、そして泣きボクロがチャームポイントの木野夕の、リストカット。
木野と初めて話したのは二ヶ月前の金曜日だったきがする。僕はヘッドフォンから流れてくる銀杏BOYZを聞きながらコアラのマーチだったかチョコビだったかパイの実だったかを(僕も浅野に負けず劣らず、赤点ばかりだ)食べていた。放課後の、暇な時間で、教室には自分以外誰もいなかった。ちょびっとセンチメンタル。家に帰ってもいい筈なんだけど動く気力がなかった。ブロークンハートだ、畜生。
それで黄昏れてたら、いきなり教室の扉がガラガラドーン!って開いて木野が入ってきた。
「あれー、菊地じゃん。何してんの?」
失恋したんだとは言えるほど仲良くないから適当になんか答えた。気がする。
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