体育館12:25~私のみる景色~

 それでも、まあいいかな。


 鉛のように重かった心も、今はそれほど重く感じない。


 進路指導室をあとにしてカバンを持ち、学校の外に出る。


 今日はそこまで寒くない。


 こうして一人で歩くと、佐伯先輩と慶ちゃん先輩と一緒に帰ったときのことが思い出される。


 あの時からそんなに時間は過ぎていないのに、ずっと前のことみたい。


「……明日からどうしようかな」


 お昼休みのバスケを見に行くこと。


 それから、佐伯先輩に謝ること。


 考えても、どうしたらいいかなんて全然わからない。


 これはまた、涼たちに話を聞いてもらうしかないよね。


 そんなことを考えながら歩いていたらいつの間にか駅について。


 家に帰り着く頃には、キレイなお月様が暗闇を照らしていた。


 家の前で立ち止まって、上を見上げる。


 ずっと手で握り締めていたせいで、いびつな形になってしまった未開封のりんごジュース。


 それは今の私みたいで、手から滑り落ちて寂しげに転がった。


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