身代わり姫君の異世界恋綺譚
◇◆◇

目が覚めると、部屋の中には自分ひとりしかいなかった。

部屋の隅の灯りが、ぼんやり部屋の中を照らしている。

こめかみはもう痛くなかった。

指先をそっと傷があったこめかみに持っていくと、いつものようなつるっとした感触しかない。

――紫鬼が治してくれたんだ……。

布団の上に起き上がると、一つ溜息を漏らす。

――穴は見つからない……私はこの世界でどうすればいいの?

涙が出てきた。

――私はここになじめないよ……。

なじもうとしても、この世界で私の髪と瞳は異色で受け入れられない。

特に女房たちに嫌われていると思うと悲しかった。

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