身代わり姫君の異世界恋綺譚
頭を反対方向に動かすと、更に真白は驚いた。

1メートルほど離れた場所でふすまを背に長い紫色の髪をした男が胡坐をかいて目を閉じていたからだ。

――誰っ!?

目を閉じていても、その男が稀に見る美青年だということがわかる。

だが今の真白にとって、この状況はありえないほど不可思議で、まるで夢を見ているのかと思われるほどだ。

――これは夢よ! 夢 夢なんだからっ

目をギュッと閉じた。

「夢ではない」

静かな凛と響く声に、真白は目を開けた。

今まで目を閉じていた美青年は、目を開けて真白を見ていた。

――目が! 赤い!

まるで吸い込まれるような赤い瞳。小説の中に出てくるヴァンパイアのよう。

「やっぱり夢なんだ」

真白は声に出していた。

「だから夢ではないと言っているだろう? お前は頭が足りないのか?」

ぶっきらぼうに言葉を浴びせられて、真白の目は大きく見開いた。

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