身代わり姫君の異世界恋綺譚
「大人だと思っているぞ?」

「紫鬼……」

いつ見ても惚れ惚れするような顔に笑みを浮かべている紫鬼に何も言えなくなる。

「じゃあな、真白」

清雅が気を利かせて先に部屋を出る。

「紫鬼、気をつけてね」

「真白、私を誰だと思っている? すぐに物の怪を退治して戻ってこよう」

真白の心配がおかしかったのか紫鬼が笑う。

「じゃあ、清雅をよろしくね?」

――力のある陰陽師だけど、弟のような清雅が心配。

「もちろんだ」

紫鬼は真白の額にひんやりする唇を当てると部屋を出た。

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