身代わり姫君の異世界恋綺譚
「放っておくつもりはないが……時間があの子には必要じゃないのかね?」

「時間なら十分経ったわ。それなのに真白は良くならない」

夏がもうそろそろ終わろうとしている。

最近では秋の虫の音が夜になると聞こえてくる。

「……分かったよ。真白に聞いて行くと言ったらそれでいい。無理強いはしないほうがいいぞ?」

「ええ」

夫の了解を得て母親はホッと安堵した。

◇◆◇

真白はいつも部屋でぼんやりしていた。

来年には大学受験をしなければと思っても勉強に身が入らない。

大学受験のことを考えると、焦ってしまう気持ち。

しかしこの半年間、何があったのかわからない真白はどうでもいいと思う気持ちが入り混じっていた。

そしてそれらを放り投げてしまうとぼんやりと放心状態になるのだ。

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