身代わり姫君の異世界恋綺譚
真っ暗な中、真白はようやく塀に近づいた。

その塀がどの辺なのかもまったく分からないが、穴を探し、塀をペタペタと触って歩いた。

ふと、その時違うことに気づいた。

あの時、コンクリートの塀の穴に押し込まれたのに、ここの塀は木材で作られていることに。

「ない、無いよう……」

――でも、元の世界とここを繋ぐのは塀のはず。

真白は満月の明かりだけを頼りに諦めなかった。

「そこの女!」

塀をペタペタと触っていると、少し離れたところから呼ばれた。

――そこの女って、私……?

振り返ると、槍を真白に向けた男が3人立っていた。

清雅と紫鬼以外に、初めて見るここの住人。

向けられる槍の先端は月明かりでキラリと光っている。

――嘘、本物の槍?

男達の目は真剣そのもので、真白は身の危険を察した。

「私は怪しい者ではありませんっ!」

恐怖に背筋が凍りつく。

逃げればあの鋭い槍で一刺しされ、あっけなく死んでしまうだろう。

真白は男たちの言うとおり、おとなしく従うことにした。

< 34 / 351 >

この作品をシェア

pagetop