身代わり姫君の異世界恋綺譚
「紫鬼殿がお前を認めたのなら、ずっとここにいるが良い」

「ずっと……?」

――ずっとここにいるなんて、考えられない。

「私は元の世界に戻りたいんです」

「元の世界?」

清雅の父は片方の眉を上げ、真白を見た。

――この世界の者でないと清雅は言っておったな。着物も初めて見る。

「もちろん。元の世界に戻れれば戻ってもかまわぬ」

「あ、ありがとうございます!」

話が分かる清雅の父に真白は満面に笑みを浮かべた。

ホッとして気が緩む。

「父上!」

その時、清雅が入って来た。

「清雅、どうしたのだ?」

のんびりとした口調で息子を見た。

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