身代わり姫君の異世界恋綺譚
「真白……」

――この娘は感情をすぐあらわにする。

そんな人間は紫鬼にとって珍しかった。

紫鬼は唇を真白の右掌につけた。

「し、紫鬼っ!やめて!」

真白が手を引こうと動かす。

紫鬼は顔を上げ、赤い瞳で真白の明るい茶色の瞳を見つめた。

「なぜだ?」

紫鬼が不思議そうに聞いてくる。

「なぜって! 汚いからっ。言ったでしょう? ばい菌がたくさんいるって」

「お前の膝を治したが、私はなんともないぞ?」

そう言うと顔を下げ、再び真白の掌を舐めるように舌が動いていく。

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