身代わり姫君の異世界恋綺譚
「真白、その姿では美しい顔も半減してしまうぞ? 女性なら美しい十二単を着るべきだ」

清文は真白の男児のような姿に顔をしかめる。

「そうだ、清蘭の着物があったはず。あとで女房に届けさせようぞ。気が向いたら着て見せて欲しい」

――また清蘭さん……。

静蘭を皆はよく口にするが、真白には名前だけで誰なのかもわからない。

何も聞かされていない真白は小首を傾げるばかりだった。

「清文様、清蘭様のお着物などもったいないです。私はこれが気に入っていますから」

「いやいや、そう申すな。後で女房に届けさせよう」

真白の言葉は聞く耳も持たずに笑って屋敷の中へ入ってしまった。

「真白っ、早く部屋に戻れ」

清雅はまだ残っていて真白に向き直ると言う。

「だって、暇なんだもん」

「暇か……」

意外にも真白の言葉に清雅が納得した。

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