かくれんぼ

「気持ちわりぃ…んだよ」

「誰もいないならしょうがないじゃない。教室に戻ろう?」

「おぉ…」

何もなかったのになぜか気味が悪いほどに寒気がした。
放送室の前の廊下には私たち以外誰もいない。
教室に戻る私たちの足音だけが廊下に響き渡る。

コッコッコッ

「なぁ。もしも…もしも本当にかくれんぼ始まったとしてさ…お前…どーする?」

柄にもなく柿沼が私にそんな質問をする。

「なに?怖いの?クスクス」
バカにしたように笑う。

「ばっ…!怖くねぇよ!ただ気になっただけだよ!俺が怖いわけねぇだろ!?」

ずんずんと前に進んでいく柿沼の後ろで、私は苦笑いしながらついていった。

ふっ…と後ろで誰かが通った気がしたのは
私の気のせいなのだろうか…?


パタパタッッ

「あっ…優花………」

教室の手前にある階段で彩佳が走ってきた。

「あれ?彩佳?」
「平河?」
「あっ………っ…教室が…っ…優花も柿沼も…逃げてっ…!」

彩佳はいつも温厚な性格で
まり焦っているところは見たことがなかった。
いつもノリに乗る!といった感じのキャラだ。
ずっと一緒にいた私でさえ彩佳のこんな焦った姿は始めてみた。

「なんなの?落ち着いて?彩佳」

「落ち着いてられない…っ…早く!下!したにいって!!学校から出よう!優花っっ!!」

彩佳に背中を押されて私たちは一階へと走った。
「ちっ…やめろ!おい、っ平河!てめ、ふざけんな!まず説明しろっ…はぁはぁ…」

柿沼が彩佳を振り切って私たちま止まった。

「あのね…大変なの…教室が!っっ…はぁ…」

「彩佳?っはぁ…」

「っ、ここじゃ見つかるから…はぁ…トイレに隠れて!」

彩佳にされるがまま私たちは近くにあったトイレの個室に入った。
バタンッ…!
ガチャガチャッッ…

「静かに聞いてね?っ…絶対大きな声出しちゃだめだし、ここから出ちゃダメだから…」

「お…おう」

ただでさえ狭い個室に3人も人が入るとさすがに暑苦しい。

「あのね、優花と柿沼が放送室に行ってから少しして、私たちは放送について話してたの…っ…そしたら、急に暗くなって…そしたらっ…そしたらっ…っはぁ…ぅっ」

「大丈夫?!」
「平河大丈夫か?」

「ぅっ…ごめっ…あまりに怖くてっ…ふぅ………あのね、急に電気が消えて、ザワザワしてたの。そしたら…教室の前の廊下からズルッズルッて音が聞こえて…」

彩佳は顔を真っ赤にしながら話を進める。


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