我等オカ研特捜部
 ツクヨは自分が読んだ月の詩を思い出せぬまま死に。

 それが悔しく朧車と呼ばれる妖になったという。

 時代と共に薄れていく記憶を呼び覚ましたのは、私の父がご機嫌な時に歌う歌だった。

 彼女は父の歌の続きが気になり、夜な夜な父をつけ回しながら俳句をよんでいたという。

 私の耳鳴りの原因はツクヨの歌であった。

 月の光が強い夜はツクヨのテンションが上がり、犬や猫、霊感鋭い人間の耳に声で聞こえるという。


ツクヨ
「あっよいよい?」

谷口
「歌の続きで、合いの手が欲しかったんだよ」

ツクヨ
「月が~でったでった~月が~あっ出た~あっよいよい!」

荒木
「それっ!」

小山
「良かったですね」

ツクヨ
「よいよい…よい、宵の明星、宵の桜」

小山
「まさかっ思いだした?」

ツクヨ
「よいざくら~

 おぼろ月夜に、

 かすむ君~

 川のみなもに

 うつるあけぼし~」

谷口
「夜の初めの薄暗い中、

 桜とおぼろ月の光で霞んでしまうあなた、

 川の水面に写るのは貴方を思う金星の様に光る私って感じ?」

小山
「違う違う、宵の桜は美しい、

 おぼろ気な月も、

 頭の中に霞むあなたも、

 それは川にうつる儚い宵の明星のように、

 って意味でしょう?」

荒木
「はらへった。
 
 あしもいたいし、
 
 あせかいた。
 
 ふろにはいって
 
 はよねたい。
 
 奥義!

 Go!死地、Go!死血死魑」

ツクヨ
「なかなかうまい、いやーお陰で新しい句が読めましたよ。
 
 じゃあまたどこかで」

 ツクヨは何も無かったかのように去っていった。

小山
「昔の句を思い出して成仏すると思ったけど」

谷口
「迷惑な妖怪だなー」

荒木
「迷惑な父親じゃない?うひひ」

小山
「ゼロあんたあたしのパンツ見たよね?」

 私は奥義、ゴー死地ゴー死地死地を繰り出した。

谷口
「説明しよう。
 
 奥義
 ゴー死地ゴー死地死地とは、
 
 相手を死地へと誘う
 
 鉄拳制裁である」 

 
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