愛しい人
臨月
久馬くんが春のGⅠシリーズで忙しい頃、私は臨月を迎えた。

赤ちゃんの成長とともに私もスクスクと成長。

子どもの日の翌日。
朝、目覚めるなり、久馬くんが呟いた。


「馬体重+10キロ」

「なぁに?久馬くんのお手馬のこと?」

「ホンダアヤ号のこと」

私のことだっっっ!
バシバシと久馬くんを叩いた。

「あと10日くらいしたら、減るもん」

予定日は5月18日。
初産だから遅れるかもしれないけど、あと10日くらいしたら、赤ちゃんに会えるんだ。

「まるいお腹も見納めだな」

パンパンになったお腹。おへそがちょこんと飛び出しているのが愛しい。
その愛しいお腹を愛しい人が優しく撫でてくれる…。

「幸せ…」

その言葉を口にすると、なんだか照れくさい。でも、口にせずにはいられなかった。

「そっか」

久馬くんは、私の鼻先にキスをすると、ベッドから出ていった。

「コーヒーいれるから」

妊娠が発覚した時、コーヒー好きな私のために、わざわざノンカフェインコーヒーを買ってきてくれた久馬くん。

朝食時にコーヒーをいれるのは、いつの間にか久馬くんの仕事になっていた。

「幸せ…」

ベッドで寝そべって、ひとり呟いた。

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