愛しい人
しばらくしてから、久馬くんが何か思いついたのか、口を開いた。

「オマエ、10キロ太ったんだよな?」

「…もうちょっと太ったかも…」

「えっ!?…まぁ、なんとかなるか…」

「………?」

なんだろう?服でも買うつもりなのかな?

入院する時に必要なものを買い足し、ランチは私の希望でバイキングにした。

「オマエ…食い過ぎじゃねぇ?」

「2人分の栄養、採らないとね!!ああ、美味し」

久馬くんは、呆れ顔だったけど、そのうち笑い出した。

「どうして笑うの?」

思わず頬を赤らめた。
笑われたことに対して頬を赤らめたのではなく、久馬くんの笑顔が私をそうさせたのだ。

「プニプニしやがって」

細い指で、私の頬に触れた。

「米粒、ついてる」

「あっ…ありがと…」

競馬学校時代からの長い付き合いなのに…どうしてこんなにドキドキさせられてるの!?

ヤダヤダ!
恥ずかしいよぅ…!
耳まで真っ赤になってきた。

「なに、照れてんだ?」

すぐに気付かれた。

「だって…」

久馬くんのせいだよ…。

「子ども、できるようなことヤル仲なのに?」

「!!!!!」

食後のデザートに持ってきたフルーツを、フォークでブスブス刺しまくった。

「…おいおい…」


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