愛しい人
「いただきます」



食事の準備をして、いつものように食べ始めた。


久馬くんは無口なほうだから、私がいろんな話題を提供して、それに乗っかって話をしてくれる。


でも、今日は私が無口になったもんだから、静かな食事になった。



私が話をしないと、こんなに静かなんだ…。久馬くんは、話をしなくても平気なのかな…。



チラッと食事中の久馬くんの顔を盗み見る。



私の名前は、本多彩（ホンダアヤ）旦那様である久馬（キュウマ）くんはＪＲＡの騎手。元々、亡くなったお父さんが日本を代表するような名騎手で、年の離れたお兄さん２人も騎手。私と久馬くんは、騎手学校時代の同期。



日曜日は、秋の天皇賞があるから、ちょっとピリピリしてるのかな…。



「ん!?」



目が合った。



「あ…あの…。天皇賞、お手馬はどうなのかなって…」



「ああ。追い切りに跨ったけど、悪くなかった」


「…そう…」



「ごちそうさま。風呂、入ってくる」



「う…うん…」



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