生徒会の恋愛事情


「おはようございます!」


「おはよう、沙羅ちゃん。」


まずあたしに話しかけてくれたのは弥先輩だった。


「おはようございます。」


生徒会室に入ってきた時よりも小さな声で挨拶を返す。


この前熱を出して倒れた一件以来、あたしは弥先輩の前ではいつも通りでいられなくなってしまった。


弥先輩は何も変わらないのに…


「おう、沙羅!
おはよう!」


「沙羅ちゃん、おはよう。」


「おはようございます!」


勇也先輩や香里奈先輩に何言われても、全然平気なのに。


「小百合先輩と聖也先輩がまだいらっしゃいませんが、先に始めましょうか。
2人なら要領も分かっていますし。」


そうやって、いつも通りの生徒会が始まる。


でもあたしは、弥先輩の声が聞こえる度に緊張しちゃう。


ホワイトボードを見るのに、弥先輩が視界に入るだけで、ホワイトボードから一瞬目を反らしてしまう。


弥先輩と目が合うだけで恥ずかしくなってしまう。


4月から何も変わらない光景に、あたしだけが変わってしまったみたいで、なんだか落ちつかなかった。


あたしはどうしてしまったのだろうか。


この時はまだ、あたしは自分の気持ちにこれっぽっちも気付いていなかった。



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