隣の席の不器用男子。
「ねぇ、授業始まるよ」
「あら、ほんと。って、コハルは相変わらず真面目よねぇ」
「だって、平常点ほしいじゃん」
「…そうね」
紗英は私の頭をぽんぽんと叩き、トイレを出て行った。
…なんなんだ。
───…
「ねぇ、原田くん」
「なんですか」
「その枕、どこから出したの」
原田くんは、青い枕に顔を埋めたまま、人差し指を机の横にかかってるバッグに向けた。
…持参ですか。
用意がいいなぁ。
にしても、枕なんてバッグに入れたら他のもの入らないんじゃ。
…いや、原田くんのバッグの中はブラックホールかもしれないしね。
うん、そうだそうだ。
「僕のバッグの中がブラックホールなんて、そんなのあると思うんですか」
「え」
「ただ漏れです、独り言」
「あ、左様ですか」
…気をつけなきゃ。
そういえば、紗英にも前にそんなことを言われた気がする。
…修行が足らんな。