隣の席の不器用男子。
3
待ちに待った昼休みを迎え、私は紗英の元へ小走りで駆けていった。
紗英はニヤニヤしていて、綺麗な顔が台無しになっていた。
「あんた、やるわね」
「え?」
「原田くんもとうとうあんたに堕ちたわね」
「え?」
「こっちの話よ」
…それなら自分の心の中でして、って言おうと思ったけど、独り言がだだ漏れな私は何も言えない。
確かに…
原田くんはあれから様子がおかしかったんだけど…
「あんたは普通にしててもかわいいのに、笑ったらやばいもんね」
「え?私の笑顔ってそんなやばいの?」
「えぇ。やばいなんてもんじゃないわ」
やばいなんてもんじゃない…
どんだけやばいんだ、私の笑顔…
「そんな酷い顔してるんだ、私…」
「は?」
「今日から寝る前にひどくない笑顔の練習するね」
「いや、そうじゃなくて…」
はぁ…とこの世の終わりのような深いため息をついて見せた紗英。
どういうことなの…
「あんたって憎めないわよね。それがわざととか計算だったら殴り飛ばすけど、素だもんね。天然だもんね。もはや天然記念物だもんね」
…酷い笑顔してるのに天然記念物って…
そのうち私の笑顔、博物館に飾られるんじゃ…
"キング・オブ・酷い笑顔"みたいな感じで。