隣の席の不器用男子。



待ちに待った昼休みを迎え、私は紗英の元へ小走りで駆けていった。

紗英はニヤニヤしていて、綺麗な顔が台無しになっていた。


「あんた、やるわね」

「え?」

「原田くんもとうとうあんたに堕ちたわね」

「え?」

「こっちの話よ」


…それなら自分の心の中でして、って言おうと思ったけど、独り言がだだ漏れな私は何も言えない。

確かに…
原田くんはあれから様子がおかしかったんだけど…


「あんたは普通にしててもかわいいのに、笑ったらやばいもんね」

「え?私の笑顔ってそんなやばいの?」

「えぇ。やばいなんてもんじゃないわ」


やばいなんてもんじゃない…
どんだけやばいんだ、私の笑顔…


「そんな酷い顔してるんだ、私…」

「は?」

「今日から寝る前にひどくない笑顔の練習するね」

「いや、そうじゃなくて…」


はぁ…とこの世の終わりのような深いため息をついて見せた紗英。
どういうことなの…


「あんたって憎めないわよね。それがわざととか計算だったら殴り飛ばすけど、素だもんね。天然だもんね。もはや天然記念物だもんね」


…酷い笑顔してるのに天然記念物って…

そのうち私の笑顔、博物館に飾られるんじゃ…
"キング・オブ・酷い笑顔"みたいな感じで。



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