ただ、名前を呼んで

家に帰ると、迎えてくれたのは祖父だった。

いつも祖父は夕方は部屋に居ることが多いので、居間に居ることは珍しい。

奥のキッチンでは祖母が夕食の準備をしている。

手伝おうかと思ったけど、予想以上に祖母が真剣なので退散した。

僕はソファに座る祖父の隣に腰を下ろす。


「今夜は何かな?」

「煮物を作ってるみたいだぞ。」


煮物か。祖母の煮物は天下一品だから、今夜の夕食も楽しみだ。

さりげない口調で祖父が聞く。


「また行って来たのか?」
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