ただ、名前を呼んで
それからの数日間、僕は母に会わなかった。いや、会えなかったんだ。
毎日の日課だったから、放課後に施設までは足を運ぶ。
だけど門の前まで行くと足が固まったみたいに動かなくなる。
どうしようもなく恐くなり、不安になり、踵を返してしまうのだ。
母の顔が見たい。
母に色んな話をしたい。
もっと母の声を聞いてみたい。
なのに、どこかで母の回復を怯えている。
たくさんの『もしも』が脳内を駆け巡って目が眩む。