ただ、名前を呼んで

朱い夕日が沈む姿にすっかり心奪われた僕。

ちょうど電柱を滑り落ちるように沈む夕日。


たくさんの人が僕の側を通過するけれど、僕は動かなかった。

光の範囲がみるみる小さくなり、消えた。

足早に通り過ぎる人達の中で、夕日の消えた場所が分かるのはきっとこの僕だけだ。


空が青みを帯びてゆく。

家に帰ろう。
朱と青の淡いコントラストが黒く塗り潰される前に。
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