ニセ×カレ
そういうと、彼は私の右手を握り、体育館裏をあとにした。

私は、急にどうしたんだろう…。

彼の胸に飛び込んだり、普通に手を握ったり…。


なんなんだろう、この胸のもやもやは…。


自分の胸に自問自答していると、彼が口を開いた。


「……来週の日曜、デートするぞ。」

「え?」

「だからさ…ったく、恥ずかしいから何度も言わせんなよ。
デートしようって言ってんだよ。」

「デート!? 何、急に。」

「付き合ってんだから、普通だろ。」

「まぁ…そうだけど…ま、いっか。いいよ。」


自分でもびっくりするくらい、素直だったんだ。その日は。

いつもなら絶対OKしないのに。


本当にどうかしちゃったんだ。

私の胸の中。


「それとさ、俺の事くらい名前で呼べよな。あんたとかやめろ。」

「うん、和樹。」


この日はこれで終わったけれど、私の胸のもやもやは翌日になっても治らなかった。


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